イベントレポート

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MICHINOOK シンポジウム「領域横断による産学連携が拓く未来-東北大学と企業の新たな共創に向けて-」を開催

2025 年3 月14 日(金)、MICHINOOK シンポジウム「領域横断による産学連携が拓く未来-東北大学と企業の新たな共創に向けて-」を開催しました。国際卓越研究大学に国内第1 号で認定された東北大学は現在、「未来を変革する社会価値の創造」を始めとする公約の実現に向け、様々なプロジェクトを推進しています。この日はライフサイエンスを中心に、AI、半導体、素材科学といった領域を横断する最新の研究を行っている4名の研究者にご登壇頂き、現在推進中の取り組みを紹介頂きました。

開会にあたり、張替秀郎理事・副学長から「東北大学が目指す国際卓越研究大学とは」というテーマで講演頂きました。最初に、国際卓越研究大学として東北大学が掲げる3つの公約と6つのゴールについて説明がなされました。続いて、コミュニティを通じた産学共創に関して説明があり、張替理事・副学長より「MICHINOOK コミュニティは東北大学に集まる世界トップレベルの研究者や最先端の技術とイノベーションの実現を目指す企業や人々が出会うコミュニティ。研究者だけでは社会実装はできない。民間企業はじめ、パートナーの方々と共に事業化に挑戦したい。」と、東北大学で生まれる研究成果の社会実装に向けた期待が述べられました。

3つの公約と6つのゴール

Commitments(公約)Goals(目標)
Ⅰ.Commitment for Impact
 未来を変革する社会価値の創造
A.Research Excellence
  国際的に卓越した研究エコシステム
  (学術的インパクト)
B.Impactful Research & Innovation
  世界に変化をもたらす研究展開
  (社会的インパクト)
Ⅱ. Commitment for Talent
 多彩な才能を開花させ未来を拓く
A.Campus for Aspiring Minds
  世界の研究者を惹きつける研究環境
B.Gateway to New Venture
  世界に挑戦する学びの創造
Ⅲ. Commitment for Change
 変革と挑戦を加速するガバナンス
A.Full-Scale Global Readiness
  全方位の国際化
B.Responsive & Responsible Governance
  機動的で責任ある経営とガバナンス
張替理事・副学長の開会挨拶
張替理事・副学長の開会挨拶

梅津光央教授(東北大学大学院工学研究科 バイオ工学専攻)からは、「機械学習が導く機能タンパク質の加速進化:バイオ医薬・産業酵素への展開」というテーマで講演頂きました。欲しい機能を持つタンパク質を迅速かつ確実に作るために、AIと高品質の教師データ(タンパク質に関するデータ)を組み合わせた独自の技術を開発し、同技術の社会実装を目指して「株式会社レボルカ」を設立した梅津教授は「アカデミアで開発した最先端技術を、レボルカで成功確度の高いパイプラインに構築し、社会還元させていく」との抱負を述べられました。

梅津教授の講演の様子
梅津教授の講演の様子

角谷倫之助教(東北大学病院 放射線治療科/アイラト株式会社創業者)からは「放射線治療×AI」というテーマでご講演頂きました。角谷助教は、東北大学病院の膨大な放射線画像と人工知能を用いて、放射線の照射計画を短時間で策定するプログラムを開発、その技術を活用して放射線治療計画支援サービスを提供する「アイラト株式会社」を設立しました。角谷助教は、「医学・工学・物理学の領域横断型で研究開発を行い、全てのがん患者さんを放射線治療で救うという目標を達成したい」と述べられました。

角谷助教の講演の様子
角谷助教の講演の様子

田中徹教授(東北大学 大学院医工学研究科 副研究科長・教授)からは「半導体が拓くヘルステックの未来 ~埋めたり、貼ったり~」というテーマでご講演頂きました。田中教授からは、「3次元積層人工網膜チップ」や、光電容積脈波(PPG)を活用した次世代型非接触インターフェイス「ネイルコンダクタ」の取り組み、「ウェアラブルGVS(前庭電気刺激)移動補助デバイス」に関する紹介がありました。田中教授は、「ユーザーのQOL 向上を最優先に考えながら、我々の研究室で長年蓄積してきた技術を活用して、次世代ヘルステックの研究開発プラットフォームを構築したい」と抱負を述べられました。

田中教授の講演の様子
田中教授の講演の様子

郭媛元准教授(東北大学 学際科学フロンティア研究所 准教授)からは「生体信号を読む、支える、つなぐ:多機能ファイバが変える未来の健康」というテーマで講演頂きました。郭准教授が開発した「光・電気・化学・磁気・機械などの機能を集積する生体親和性の高いポリマー製の多機能ファイバ」は、脳や体内の生体計測など様々な応用可能性が期待されています。郭准教授は「バイオファイバ技術は科学にも社会にも貢献できる」と述べ、今後は事業化にも挑戦していきたいと語られました。

郭准教授の講演の様子
郭准教授の講演の様子

続いて、登壇者4名によるパネルディスカッションが実施されました。ディスカッションでは、司会者から「テクノロジーの進歩は人間を幸せにするか?」「産学連携を成功させるためのポイントは?」などのテーマが出され、活発な意見交換がなされました。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

最後に、湯上浩雄副学長より閉会の挨拶がありました。東北大学は日本で最初に「医工学研究科」を立ち上げるなど、医学と工学の横断的研究に挑戦してきたという歴史を紹介した上で、「本シンポジウムを通じて、あらためて産学共創の推進と社会課題解決に取り組んで欲しい」と述べられました。

湯上副学長のご挨拶
湯上副学長のご挨拶

シンポジウム終了後は、ネットワーキングが実施されました。会場内では、講演者に対する質問や名刺交換が行われ、活気のあるネットワーキングとなりました。

ネットワーキングの様子
ネットワーキングの様子

2025 年度も東北大学の最新の研究内容や取り組みを発信するMICHINOOK セミナーを開催して参ります。皆様のご参加をお待ちしておりますので、引き続きMICHINOOK コミュニティをよろしくお願い致します。